あるソフト開発現場での会話である。

「システムを利用する人は、システムに踊らされている」

ある会社が、業務効率化のために業務支援システムの導入を決めた。

業務支援システムは、例えば生産ラインの場合、部品組み立て手順が逐一画面にアニメーションで表示されたり、営業社員や事務社員向けならばその社員の業務の進捗が表示され、次の業務に必要な書類をダウンロードしたり、書類を作成したらアップロードし承認を得るなどの業務をすべてシステム上で行える。

私はこれらのソフトウェアの開発に携わった。

ここまで読むと、業務システムの導入は企業にとって有益なものであると思われるかもしれない。

しかし、いくら企業の業務をヒアリングして開発されたシステムでも、できることには限界があり、さらに設計のまずさによってユーザーに余計な負担をかける場合がある。

「ああ、このシステム便利ですね。使いやすいですぅ」

という感想はごくまれというか、ほとんど聞かない。

大抵の場合、システムのユーザーとなる現場部門から駄目出しされるのを「いやー、そこをなんとか。決定事項なので」と無理やり使わせる場合が多い。

全くの新規のシステム導入なら、導入研修でシステムに慣れさせ、「ほら、便利でしょ?」と言えるが。

残念なのは既存システムの老朽化により、新システムを開発し移行する場合である。

そもそも、プログラムが古くなるというのはどういうことだろう?

システムの老朽化というのは、ハードウェアの老朽化だったり、OSのサポートが終了したが、新しいOSに対応できていないとか、そういうものである。

この場合、スムーズに業務フローを変えずに新OSに対応することを考えれば、「ここの部分はWindows10に対応していないから、プログラムを改修しましょう」と言った具合に、最小限のコストでシステムが出来上がる。

が、悲惨なのは「これを機に新しい業務パッケージを導入しよう」と考えた場合。

この場合はもう、業務フローがガラリと変わる。
いままで先輩から教わった仕事の手順を、思い切って忘れなければならない。

また、そのパッケージソフトが本当に完成しているか、顧客からは見えないのが問題。

例えば、私が以前携わっていた業務パッケージは、大手ベンダーの物流ソリューション(ソリューション=解決)で、私は2次開発からプロジェクトに参画していた。

ベンダーのホームページでは、あたかも完成しているように宣伝され、営業も全国を走り回っていたが・・・。

あれは当時まだ1次開発の段階でバグだらけで納期を守れず、残りは2次開発で作ろうと協力企業を寄せ集めていた頃でした。

ま、そういう内情はお客さんは知らないわけです。

で、大体パッケージソフトというのは、半分想像で作っているわけですよ。
世の中には様々な物流系企業があり、基本の業務はカバーするけれど、お客さん固有の業務については、カスタマイズして対応しますよ。
というやり方。

費用的にパッケージ部分が2~3億で、カスタマイズ部分が追加で1億。
その物流パッケージは、営業が受注すると、バグを直しながらカスタマイズするという、とんでもない開発が続けられていた。

その前置きをした上で
「システムを利用する人はシステムに踊らされている」

というのは、利用者は今まで慣れていた業務のやり方を、新しく導入されるシステムのやり方に変えなければならない。ということ。

パッケージソフトウェアは今までの業務のやり方をすべてカバーできるものではないので、今までシステムで自動的にやっていたことを、手作業でやらなければならないという状況も発生する。

私自身、お客さんのところに出向いて、旧システムを触らせてもらったのだけれど。
あからさまに旧システムの方が使いやすい。

ベンダーの営業トークを聞いてて、「こいついい詐欺師になれるな」と思った。
なによりも、ハンディターミナルで、商品のバーコードをスキャンすると「予期しないエラー」で落ちる。
営業曰く「そこ、黙ってていいですから」

パッケージを導入する企業も、億単位で発注しているので、もう後戻りできないわけで、現場がどんなに不満でも、お客さんのシステム部門と開発会社の言いなりにならなければならない。

新システム移行の際、顧客企業も要件定義書を確認し、システム開発の要所要所で関わりを持たなければ、道化師のように、使えないソフトを無理やり使う、というかソフトに使われるし。

パッケージソフトなら、自社の基本的な業務の流れは崩さないように注意しなければ。

まさに「システムに踊らされる」状態になってしまう。

以前、運送会社でドライバーをしていた経験からいうと、物流パッケージは正直役に立たない。使いにくい。